「無痛分娩なら、そこまで痛くないんでしょ?」
出産前の僕は、どこかでそんなふうに思っていました。
しかも今回は3人目です。
長男、長女に続いて3人目。
「さすがに今回は、ある程度流れも分かってるし大丈夫だろう」
そんな気持ちもありました。
だから朝7時、妻が分娩室に入ったときも、僕はまだ少し余裕があったんです。
昔のスマホを持って、モバイルバッテリーも準備。
AirPodsまで持ってきました。
「長丁場になるかもしれないし、ブログでも書こうかな」
……今思うと、めちゃくちゃ余裕かましてました(笑)。
ところが、この日の午後。
僕のそんな考えは、完全に吹き飛びました。
今回は、44歳だった僕が3人目の無痛分娩に立ち会った一日の記録です。
「無痛分娩って実際どうなの?」
「立ち会い出産でパパは何をすればいい?」
「3人目ならやっぱり早いの?」
そんな疑問を持っている方に、少しでもリアルな参考になればと思います。
朝7時、妻が分娩室へ|僕はまだ余裕だった
朝7時。
妻が分娩室へ入りました。
僕はというと、まだそこまで緊張していません。
今日は長丁場になるかもしれない。
そう思って、
- 昔使っていたスマホ
- モバイルバッテリー
- AirPods
まで準備していました。
そして、
「ブログでも書こうかな」
なんて思っていたんです。
今考えると、ずいぶん呑気ですよね。
3人目の出産だから、どこかに「今回もきっと大丈夫」という気持ちがあったんだと思います。
9時18分。
面会受付を済ませて病棟へ向かいました。
待合室で待つのかなと思っていたら、いきなり分娩室へ。
「え?え?水買ってきちゃったんですけど……」
と言ったら、
「棚に置いといてくださいね」
と。
ああ、そうですか……。
水、置いときます(笑)。
そんな感じで分娩室に入りました。
そして、その瞬間。
赤ちゃんの心拍音が聞こえてきました。
大人よりずっと速いリズム。
ドクンドクンドクン……。
その音を聞いて、
「ああ、ちゃんと元気なんだ」
と、少し安心したのを覚えています。
陣痛の進行を横で感じながら、僕は何もできなかった
分娩台に横になる妻。
その横に椅子を置いて、僕は座っていました。
ソワソワしているはずなのに、室温が心地よくて、正直ちょっと眠くなるくらい。
「無痛分娩だし、今日は時間がかかるかも」
まだそんなことを考えていました。
すると、スマホに通知が届きます。
妻の陣痛の通知です。
妻がボタンを押すと、僕にも通知が来る仕組みになっていました。
真横に妻がいるのに、スマホに「陣痛」の通知が届く。
なんだか不思議な感じです。
さっきは15分間隔。
次は10分後。
「あ、確実に進んでる」
スマホの通知を見ながら、少しずつ緊張感が増していきました。
助産師さんが腰をマッサージしてくれたり、痛み止めの準備が始まったり。
僕は横で見ているだけ。
これが、立ち会い出産のリアルなのかもしれません。
無痛分娩でも痛みはゼロじゃなかった
10時4分。
痛み止めの薬が入りました。
背中に流れ込む感覚は、妻にも分かるそうです。
10時26分には、持続用の装置も装着。
足湯が冷めると、すぐに温かいものに交換してくれます。
助産師さんたちが妻の様子を見ながら、いろいろと対応してくれていました。
ここで僕は、
「無痛分娩=痛くない」
という、自分の中にあったイメージが少しずつ変わっていきました。
無痛分娩だからといって、何も感じないわけではない。
少なくとも、僕がこの日に目の前で見た妻は、決して「楽そう」ではありませんでした。
もちろん、麻酔の効き方や感じる痛みには個人差があります。
なので「無痛分娩はこうです」と僕が断言できる話ではありません。
ただ、夫として横で見ていた僕には、
「無痛だから大丈夫」
とは、とても思えませんでした。
12時20分、昼食へ|そして戻った瞬間に空気が変わった
12時20分ごろ。
助産師さんから、
「今ならお昼行けますよ」
と言われました。
その言葉に甘えて、僕は昼食へ。
「じゃあ、ちょっと食べてきます」
そんな感じで一度、分娩室を離れました。
そして12時55分。
戻ってきた瞬間。
空気が変わっていました。
妻は目を閉じて、うなっている。
明らかに、さっきとは違います。
辛そう。
苦しそう。
見ているこっちまで、泣きそうになる。
「何をしたらいいんだろう」
本当に分かりませんでした。
助産師さんたちが一瞬部屋を出たタイミングで、僕は妻の手を握りました。
目が合います。
「辛い?」
「……うん」
その一言で、もうダメでした。
何か気の利いたことを言おうとしていたわけじゃありません。
ただ、妻の手を握ることしかできませんでした。
3人目だから早い?|そんなに簡単じゃなかった
3人目だから、きっと早い。
勝手にそう思っていました。
でも、お産はそんなに簡単なものじゃありませんでした。
腰の右側だけ薬が効きにくいらしく、体勢を変えたり、足を回したり、四つん這いになったり。
妻はいろいろな体勢をとっていました。
僕は、その横にいる。
時計を見る。
「まだか……」
また時計を見る。
「まだなのか……」
早く終わってほしい。
でも、赤ちゃんが無事に生まれてほしい。
妻も早く楽になってほしい。
いろんな気持ちが頭の中を行ったり来たりしていました。
そして何より、
「俺、何もできないな……」
という気持ち。
痛みを代わってあげることもできない。
出産することもできない。
妻の体の中で何が起きているのか、全部理解できるわけでもない。
ただ、横にいる。
それだけでした。
でも、今思えば。
この「横にいる」ということくらいしか、僕にはできなかったんですよね。
16時半、分娩室が一気に慌ただしくなった
そして16時半。
突然、その時が近づきました。
分娩室が一気に慌ただしくなります。
人が増える。
声が飛び交う。
空気が変わる。
僕は妻の頭の方へ。
そして、手を握りました。
あまり声は出しませんでした。
どう声をかけたらいいのか分からなかったからです。
うちわで仰ぐ。
手を握る。
そして、ただ祈る。
それくらいしかできませんでした。
「上手、上手」
助産師さんの声が聞こえます。
そして、
「頭が見えてきたよ!」
その声を聞いた瞬間。
妻の太ももの間から、赤ちゃんの顔が見えました。
僕は正座のような体勢になっている妻の横から、その瞬間を見ていました。
涙で視界がぼやけていました。
そして赤ちゃんは、
スルスルッと、
この世界に出てきました。
産声が聞こえた瞬間、言葉が出なかった
へその緒にクリップ。
「切りますよ」
そう言われて、
「はい」
と返事をしました。
それしか言えませんでした。
そして、産声。
力強い声でした。
血のついたシーツ。
絡まるチューブ。
汗と涙でぐしゃぐしゃになった妻の顔。
さっきまでお腹の中にいた赤ちゃんが、目の前にいる。
頭では分かっているのに、現実感がありません。
「がんばったね」
そう言いたい。
「ありがとう」
とも言いたい。
でも、声が出ない。
妻のおでこを撫でて、ただ頷きました。
妻も泣いていました。
僕も泣いていました。
そして、やっと絞り出した言葉が、
「……おつかれさま」
でした。
妻は静かに頷いてくれました。
無痛分娩に立ち会って、44歳の僕が思ったこと
今回、3人目の出産に立ち会って思ったことがあります。
それは、
無痛分娩でも、出産はやっぱり大変なんだ。
ということ。
もちろん、無痛分娩によって痛みが軽減されることはあります。
でも、
「無痛=楽」
ではありませんでした。
少なくとも、僕が妻の横で見ていた出産は、そんな簡単なものではありませんでした。
そして何より思ったのが、
出産って、命がけなんだな
ということです。
10ヶ月。
お腹の中で赤ちゃんを育てる。
そして最後に、自分の体を使って、この世界に産み出す。
それを目の前で見て、
「女性って、本当にすごいな」
と改めて思いました。
これは綺麗事じゃありません。
実際に分娩室で見た僕の本音です。
立ち会い出産で、パパにできることは意外と少ない
今回、僕自身が感じたのは、
「パパにできることって、そんなに多くないな」
ということでした。
もちろん、病院や奥さんによって違うと思います。
でも僕の場合、
- 手を握る
- うちわで仰ぐ
- 水分を取れるようにする
- 必要なものを渡す
- 助産師さんの指示を聞く
- そばにいる
そのくらいでした。
でも、だからといって「何もしなくていい」ということではないと思います。
むしろ、
何もできないからこそ、そばにいる。
それだけでもいいんじゃないでしょうか。
少なくとも僕は、この日、妻の横にいてよかったと思っています。
3人目が生まれて、また家族の物語が始まった
我が家には、これで3人の子どもがいます。
3人目ともなると、
「もう慣れてるでしょ」
と思われるかもしれません。
僕も少し、そう思っていました。
でも、全然違いました。
同じ「出産」でも、毎回違う。
妻の状態も違う。
その時の自分の気持ちも違う。
そして、生まれてくる子どもも違う。
だからきっと、何人目でも特別なんでしょうね。
45歳になった今、振り返ってみても、この日のことは忘れないと思います。
朝はブログを書く気満々で、モバイルバッテリーまで持って行っていた僕が(笑)。
午後には、妻の手を握りながら泣いていました。
人生って、何が起きるか分かりません。
だから面白い。
そして、この子が生まれたことで、我が家にはまた新しい物語が始まりました。
まとめ|無痛分娩でも、出産はやっぱりすごかった
今回の出産に立ち会って、僕が感じたことをまとめると、
無痛分娩だからといって、出産が「楽」になるわけではない。
そして、
3人目だからといって、必ず早く終わるわけでもない。
何より、
出産は命がけです。
僕には痛みを代わってあげることはできませんでした。
できることも、ほんの少しでした。
それでも、妻の隣にいることはできた。
そして、その場所で赤ちゃんが生まれる瞬間を見ることができた。
それだけで十分だったのかもしれません。
これから出産を迎えるパパへ。
「俺は何をすればいいんだろう?」
と考えているなら、まずは奥さんに聞いてみてください。
何か特別なことをするより、
「ここにいるよ」
という存在でいることのほうが大事なのかもしれません。
僕もまだまだ父親としては修行中です。
45歳になって、3人の子どもを育てながら、仕事をして、ブログを書いて、いろんなことに挑戦しています。
うまくいかないこともあります。
迷うこともあります。
でも、家族が増えたこの日を思い出すと、
「まだまだ人生、これからだな」
と思います。
人生は一度きり。
挑戦は何度でも。
そして、何歳からでも、人生はまだまだ面白くできる。
そんなことを、3人目の赤ちゃんが教えてくれた気がしています。
